⚫︎排尿障害
排尿困難とは、尿が出にくい症状の総称ですが、"尿の勢いが弱い"、"尿を出したくでもなかなか出ない"、"尿線が分かれて出る"、"排尿の途中で尿が途切れる"、"尿をするときに力まなければならない"などの症状があります。
⚫︎蓄尿障害
前立腺肥大症では、多くの場合頻尿がみられます。頻尿については、一日に何回以上という定義はありませんが、朝起きてから就寝までに概ね8回より多い場合、夜間は就寝後1回以上排尿のために起きる場合、それぞれ"昼間頻尿"、"夜間頻尿"と考えられます。"尿意切迫感"は、急に我慢できないような強い尿意が起こる症状を言います。また、尿意切迫感があって、トイレまで間に合わずに尿が漏れてしまうこともあります。尿意切迫感があり、頻尿を伴うものを過活動膀胱といいますが、前立腺肥大症の患者さんの50-70%が過活動膀胱を合併します。過活動膀胱では、まだ膀胱に十分尿が貯まっていないのに、膀胱が勝手に収縮してしまうので、頻尿になります。前立腺肥大症で、排尿後に膀胱内に尿が多量に残るようになると、膀胱に貯められる尿量が減って、結果的に頻尿になる場合もあります。
⚫︎排尿後症状
排尿後に"どうもすっきりしない"、"尿が残っているような感じがする"といった"残尿感"の訴えが多いです。また、排尿を終えたと思って、下着をつけると尿が漏れて下着が汚れることがあります。 前立腺肥大症の治療には薬物療法のほかに前立腺腺腫核出術や経尿道的前立腺切除術(TUR-P)などの手術がありますが、多くの手術は全身麻酔で実施され、1-2週間の入院が必要となります。我々血管内治療専門医が近年実施している治療として、前立腺動脈塞栓術(PAE)があります。鼠径部の総大腿動脈もしくは手首の橈骨動脈を局所麻酔下に穿刺し、カテーテルを両側の前立腺動脈に挿入し、血管造影を行います。前立腺動脈に選択的に塞栓物質を注入、前立腺の動脈血流を遮断し、前立腺に虚血(栄養が行かない状態)を生じさせます。前立腺は徐々に壊死、縮小することで、症状の緩和が得られます。低侵襲治療ですので、超高齢の患者さんや合併症を多く持たれているために全身麻酔が受けられない患者さんにも実施可能です。またTURPなどの手術後の合併症として知られる逆行性射精などの射精障害や勃起障害、尿道狭窄も起こりにくいとされています。